空き家問題は、よその問題ではなくなりました。
子供世代が直面する「団塊世代の持ち家の管理と処理」
空き家は、過疎化が進む地方が抱える問題だけではありません。今、都市近郊の住宅が空き家となっていくケースが非常に増えています。その理由としては団塊世代の高齢化があります。第一次ベビーブームに生まれた世代は、75歳以上になっています。突然、病気で入院したり、亡くなることも少なくなく、想定していなかったタイミングで誰も住まなくなった家は、その子供(団塊ジュニア)に託されることになります。とはいえ団塊ジュニアも、すでに55~65歳で、親が現役時代に建てた家は古くて必要ないのが現状です。今、この団塊ジュニア世代の多くに「誰も住まなくなった実家をどうするか?」という問題がふりかかってきています。
ベッドタウンの戸建て住宅が「負」動産へ
1970年代から1980年代にかけて、地下高騰や都市部の住宅だけでは供給が追いつかず、都市近郊にはいわゆる「ベッドタウン」が設けられ、大量の一戸建てが売りに出されました。こうした物件を購入したのが、当時働き盛りだった団塊世代というわけです。ベッドタウンというと、その多くは都心から40分から1時間ほど離れ、最寄りの駅からバスで10分から20分という不便な場所にあります。住民の数は年々減っていき、残っている人たちの大半が高齢者になり、採算が取れないスーパーや商業施設は次々に撤退していきます。また、バスの減便・廃線も進んでいきます。都心回帰、駅近のマンションが好まれる今の時代、そんな半ばゴーストタウン化した活気のないベッドタウンに、若い世代が住みたがらないのは無理もありません。
子供世代が引き継いだ「負」動産は売れない
子供世代は、こうした親世代から引き継いだ一戸建てを売却したり、賃貸に出しますが、「買い手が全く現れない」「安値で買い叩かれる」「継続的に借りてくれる人がいない」という厳しい現実に直面しています。そもそも立地が「都心」「駅近」でもない物件は、ニーズが圧倒的に少ないのです。買い手や借り手が不在のまま、家は次第にメンテナンス・リフォームのコストをかけられずに放置されるようになり、最終的には空き家になっているのです。家を3ヶ月も放置すれば庭に雑草がはびこり、1年経つ頃には家屋の外壁が苔やカビで薄汚れ、誰が見ても空き家だとわかる荒れ果てた状態になります。こうした家は、「負動産」になります。家が空き家化する事情は多岐に渡りますが、これは現代の典型的なケースと言えます。
更には法律が空き家を追い詰める
約5年ぶりに公表されたデータによると、日本には900万戸程度の空き家が存在することがわかりました。この状況に対して政府は手をこまねいて見ているわけではありません。2023年に「空き家対策特別措置法」が改正され、新たに「特定空き家」の前段階「管理不全空き家」の認定が導入されました。以前なら「特定空き家」認定で固定資産税の住宅用地特例が外れていたのに対し、改正後は「管理不全空き家」認定の段階で特例が外されます。また、2024年4月から相続人申告登記が義務になりました。いわゆる「相続登記義務化」です。「不動産を自分が相続すると知った日」から3年以内に相続登記に申請をしなければなりません。猶予期間を過ぎれば10万円以下の科料が課せられます。平易な表現をすると、「ちゃんと空き家を管理しないと、固定資産税が6倍になりますよ。ちゃんと相続登記しないと罰金ですよ」ということです。家というものは人が住まなくなれば、著しく老朽化していきます。放置すればするほど資産価値は落ちていきます。空き家に関する基礎知識や法改正を知らずに、見て見ぬフリをしていると、自分の財産を減らしてしまうことになります。
早めに考えて対策をしましょう
あなたが親世代なら、我が家が「将来的に負動産になってしまうかもしれない」という危機意識を持ち、どうすればそれを回避できるのか家族で、特に子や孫と話し合うべきです。自身が子世代ならば、親世代が元気なうちに考えを共有して、方向性をまとめておきましょう。
まだ早いと思う家庭でも、親が元気なうちに対策しましょう
親が元気なうちに「資産価値のある駅近の住みやすいマンションに住み替える」「子世帯と同居する」などの検討を早めに行いましょう。
万が一、親が亡くなってしまった時は、忙しくても、少しでも早めに動くのが得策です
親が亡くなったときは「リフォームして自分が住む」「リフォームして賃貸住宅にする」「3000万円控除ができる期間に売却する」「空き家管理を行う」などを決めておきましょう。